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バンドネオンに思う

 昨今、この楽器に関わる問答で必ずと言っていい程「戦前製ですか?」と交わされることがある。良否の目安にしているのだろう。Ar.ではバンドネオンの国外流出を法的に規制しているそうだが、これから5年10年のスパンで気軽に入手は望めなくなるかも知れない。近年ドイツ等で、新しいモデルを小規模ながら製作している所が数社あるそうだ。これまでの認識を変えさせ、更なるモデルの実現を願いたいものだ。

 ところで、冒頭の問答は、戦後製に比べ鳴りの良いバンドネオンのことを指し、リード組み込み精度の良否を二分したことでもある。バンドネオンは構造上、リードは個々のプレートに一連を成し取り付けられているが、何かと影響を受け易いところでもある。

 さて、蛇腹楽器の同属でもあるアコーディオン (A) のリードの組み込み精度はどうだろうか? 「バンドネオン(B) に決まっている」と思う (B) 派が多いかも知れない。実は、戦前製で選り抜きのAAですら、普通 の(A) に比べ精度面では劣っていることもある。膝の上で躍動する蛇腹ワークの妙技で極めているのだろう。これまでメンテでリード折れや冴えぬオリジナルリードも数多く取り替えにあたってきたが、まさしく良否は一義的にリードの組み込み精度によることを実感している。引きずった楽器の修復に当たることもあるが、何かと一言で語れぬ楽器でもある。